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季刊誌―エルベテーク

2017年 春季号 アメリカからのレポート

ロサンゼルスの冬は雨がよく降り、5年ほど続いた干ばつがようやく解消されました。昨年と比べ、路肩の草花や山の緑が青々と茂っているように見えます。そして、サマータイムが始まり、いよいよ春本番を迎えています。現地校へ通う子どもたちは、3月中旬から4月中旬かけて、それぞれ春休みが1週間ほどあります。そして6月の学年末へ向けて終盤を迎えます。家庭学習に積極的に取り組み、休みを有意義に過ごしてほしいと思います。

 さて、今回のレポートですが、日本と比較してアメリカの子育てや教育全般について、いくつかトピックを取り上げて考察したいと思います。日々の学習や保護者との懇談を通して、また、一人の親として、新しいことに気付いたり、逆に今までそれほど重視していなかったことの意義を再確認したりすることがよくあります。アメリカと日本の違いを認識し、互いから学べることが何かを考えるきっかけになればと思います。

トピック1 子育てについて

アメリカが多民族国家であるということは、ロサンゼルスに住んでいると非常によく分かります。子どもと公園などへ行くと、様々な言語が飛び交うのはよくある光景で、子どもたち同士は英語、親子間は他言語なんていうことは少なくありません。言語や文化が多種多様であることを受け、子育てや教育に対する考え方も様々で、”to each his own” (皆、それぞれの意見や好みを持つ権利があり、それを尊重する、という意味)というフレーズがよく使われるように、全般的に日本より個人差が擁護されています。そのため、社会全体で子育てに対する考えが錯綜しており、「ブーム」や流行りに弱いのもアメリカの親の特徴で、皆あれやこれやと本やウェブから情報収集をし、「自分の子どもや家族に合う育児スタイル」を探し求めています。*以下の内容は、あくまでも一般論としてお考え下さい。

一般的な育児方針
 異文化が共存するアメリカ社会では、お互いを尊重しあいつつ、自己を大切にする、という個人主義の考えが育児や教育の基盤にあります。自分と他人は違うものであると認識し、己を知ること、互いの違いを受け入れることを大事にすることは、アメリカでの子育ての特性であるといえるかと思います。
 この中核となるのが、「子どもを一個人として扱う」という考え方です。アメリカでは乳児に個室を与え、一人で寝かせる慣習がありますが、この考えを裏付けるものと考えることができます。子どもを一個人として扱うことで、自立心を育てようとするとのことです。
 さらに、一個人として扱うということは、個人の意見・考えを尊重することが非常に大切にされます。言葉がまだ発達していない年齢ではベビー手話が最近普及し、ことばが出ていなくとも、子どもが自分を表現する手段を与えることに意義があると言われるほどです。言葉で表現ができるようになる幼児期には、子どもが泣いたり癇癪を起すことは、子どもの表現であり成長過程の一つと捉え、泣くだけ泣かせて、落ち着いてから話し諭すような対応が見られます。少し言い換えれば、泣いたり癇癪を起しているときは放置をするということです。この方法で、「癇癪を起しても思い通りにはいかない」ということを気付かせ、言葉で気持ちを表現するように仕向けるのだそうです。
 自分の気持ちにまず気付かせて、コントロールすることをおぼえる、ということでしょうか。日本では外で子どもが泣いたり、騒いだりしたら、周りに迷惑がかからないようすぐに静かにさせようとすると思いますが、アメリカでは子どもが泣いていてもそれほど反応はしない印象があります(日本より土地や建物が広いということもありますが)。大きく騒いだり癇癪をおこした場合は、人の少ないところへ連れていって、落ち着くまで待ってから話し合う、という対応を取るようです。
 「子どもを一個人として扱う」という考えには、「説明して諭す」「子どもの意見も聞いてあげる」という接し方につながっています。子どもが大人の言うことを聞かず注意する時や子どもにしてはいけないことを注意する時、親や大人はその理由を説明し、選択肢を与えたり、時には褒美で導こうとします。交換条件で物事をさせるのは効果的ではないという見方が多いようですが、「これをしたら、これができる」というものごとの理屈を示すことは良いとされています。叱ることについては否定的に捉える親が多く、厳しいしつけは敬遠されています。(これは「虐待」に対して社会的に非常に敏感であることも一因ではないかと思います。)
 一方で、一個人と扱われるからには、責任を持つことも幼い年齢から教えられます。最も一般的な教え方は、家事手伝いをさせることです。家族の一員なのだから、できる範囲で貢献し、自分が与えられた課題は自分で責任を持つことが教えられます。家庭によってもやり方は違うと思いますが、家事手伝いをきちんとすれば、お小遣いがもらえたり、合わせてお金の節約や扱い方について教える家庭は少なくありません。
 学校の宿題についても、自分自身のためになる勉強だから自分でするべき、という姿勢で子どもを見守る親が多い気がします。次のセクションでもアメリカでの宿題や家庭学習に対する一般的な考えについて述べていますが、生活全般において責任をもって自分で考えて行動できることが子どもに求められます。
 ざっくりと一般的な子育ての考え方を書き出してみましたが、アメリカに住む親の特徴をもう一つ言うならば、柔軟であるということではないかと思います。例えば、上記のように理屈を説明しても、なかなか行動が改善されずすぐに癇癪を起すなど問題が続くと、今の接し方は「自分の子どもに合っていない」と判断し、より効果的な対応策を探そうとします。周りにいろいろな情報があるので、影響されすぎて度々子どもへの接し方を変えるのは問題ですが、上手くいかないことがあれば助けを求めたり、解決に向けてすぐに行動しようとする傾向は強いと思います。

トピック2 家庭や学校外(塾など)での学習に対する見方


 日本では特に小学生高学年から中・高校まで塾へ通うことは一般的ですが、アメリカでは小・中学生が塾へ通うことはそれほど多くありません。塾というような言葉も存在せず(和英辞書で出てくるcramming schoolは一般的に使われません)、あえて言うならチューターと呼ばれ、家庭教師のような形態が多いです。自らの判断でチューターへ通うより、学校の先生などから成績に心配があるからと勧められて始めるケースの方が多いと思われます。また、こちらにある塾の多くは高校生の大学受験対策や大学生向けのものが多く、実情が大きく異なります。
 塾が日本ほど社会的に浸透していない理由はいくつか考えられます。まず、第一の理由に、日米の入試形態の違いが考えられます。日本の受験、特に高校や大学受験では、通常学校では教えられない内容が出題されるので、必然と塾や予備校へ通うことになりますが、アメリカでは高校まで受験は私立校を受ける場合のみ、そして大学の入試は高校在学中の履修クラス(通常難易度の違うクラス有)の成績のほか、エッセー、SATのような学力テスト(基本的に高校の学習要綱をベースとした読解、文法と小論文、数学の3教科)、ボランティアや部活動などの課外活動が総合的に審査されます。試験に向けた特殊な対策が必要な日本とは違い、アメリカでは学校でしっかりといい成績を取ることや課外活動に力を入れることが大切になります。高校生で大学に向けて家庭教師や塾へ通う人もいますが、少数派です。
 もう一つの理由として、「勉強は学校で行うもの」という見方が強いことが一因ではないかと思います。大人でも、仕事とプライベートな時間をはっきりと区別することが大事にされていることからも、特に中学校あたりまでは勉強は学校で、それ以外は習い事や家族と過ごす時間、と捉えられていることが多い印象があります。
 近年では小学校の宿題をなくす動きも見られます。宿題は効果がない、子どものストレスを増やすだけで必要ない、というのです。もちろん、宿題の意義を理解し擁護する親も多いですが、実際に宿題を完全になくした小学校があると聞いたことがあります。アメリカの家庭では家庭学習の習慣があまり一般的ではない状況に加え、就学と同時にかなりの時間を宿題にかけることが求められると、親への負担が増えます。また、子どもが嫌がったり、親が効果的に促し指導をする手立てがないと、宿題すること自体を苦痛と感じてしまうこともあるでしょう。
 宿題や家庭学習の目的を捉え、効果的に進められるように対策をとるより、宿題そのものに対する不満として表面化することが多いようです。宿題の目的については、エルベの教室に通う保護者ならよくご存じだと思いますが、学校側も親もプリントなどをこなすことが目的となってしまって、親子で向き合い子どもの学ぶ姿勢を育てるツールと捉えられていないのは残念なことです。
 学校の宿題については、ガイドラインも設けられています。キンダーガーテン(年長)で10分を基準に、学年ごとに10分増やす(1年生は20分、2年生は30分など)という計算で、高校生は100分から130分となっています。*¹日本であれば、学校の宿題のほかにも塾や他の教材を利用して勉強をするので、時間としてはこちらの倍かそれ以上でしょうか。
 次に、宿題と関連して家庭学習の傾向ですが、実に個人差があります。学習教室や通信教材などが普及している日本では、おのずと家庭でも学習をすることに抵抗を持たないと思いますが、こちらでは特に幼児から小学校低学年までは学習か自由な遊びの時間のどちらかを選択する傾向があります。学年が上がれば上がるほど、遊ぶ自由時間が短くなるので、小さいうちにできるだけ遊ばせたり、アートやスポーツをさせたりする方が優先される印象があります。
 アメリカで子育てをする場合、上記で述べたような社会的な傾向などを認識しながら、親として我が子に何を優先して教えたいのかを判断し実践することがいかに重要か、つくづく感じます。子育てスタイルはいろいろな違いがあり、情報が錯綜して迷いやすいご時世ですが、親が方向性をもって子育て・教育をすることが子どもの成長につながるのではないかと思います。
 度が過ぎれば何事も悪い影響を及ぼします。アメリカであろうと日本であろうと、やはり、バランスのとれた接し方・教え方が大切だと感じます。また、自主性を育てようとする姿勢が放任になってしまわないためにも、タイムリーな注意・声かけ、見届けることと認めることがポイントだと思います。
 そして、効果的な接し方・教え方を取り入れれば、家庭学習や宿題が負担にならないこと、かえって生活全般に良い影響を与えること(責任感を育てる良い道具にもなること)などについて、エルベエデュケーションの具体的な指導を通して保護者の方へ理解を広げていきたいと考えています。


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