エルベテーク
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季刊誌―エルベテーク

2017年 春季号 巻頭言 「事実と実績」を多くの人へ

私たちの取り組みを示す良い機会

 手前味噌になるかもしれませんが、改めてエルベテークの歩みを振り返ると、貴重な「事実と実績」があることに気づきます。

 私たちの教室で学んできた子どもたちやその保護者の方たちにとっては、きわめて当たり前で自然なことと受け止められているかもしれません。しかし、世の中を見渡すと、大切な「事実と実績」に欠けた断片的な事例が堂々と紹介されているのが現状です。

 さらに、わずかな事例が発達の遅れに対する取り組みのすべてであるかのように語られるケースも目につきます。ほとんどが、子どもを直に継続して指導した、その結果とは思われないような「専門家」の言葉に、なにか虚しさとともに言葉の恐さといったものを感じます。

 そんなこともあり、以前からなんとか私たちの取り組みを「事実と実績」という観点から広く伝えられないかと考えてきました。そして、最近、うれしいことに、そうした機会が増えてきたように感じます。セミナーでお話ししたり、本の形にまとめたり、私たちの教室が雑誌や新聞の取材を受けたり、といった機会が重なっています。

看護師の保護者とともに

 3月12日には川口駅前のメディアセブンで「わが子の『発達障害』に直面した医療者とともに考える」(後援・川口市)というセミナーに講師として参加し、話をしました。さいたま市の「NPO法人Education in Ourselves 教育を軸に子どもの成長を考えるフォーラム」の協力によって実現したものです。

 このセミナーではまず、エルベテークに通う保護者であり看護師でもあるUさんの体験談から始まりました。

 ご主人の赴任先である台湾で長男(小学4年生)の「自閉症」がわかったこと、言葉の遅れが顕著で他のさまざまな課題があったこと、いろいろなツテを頼って療育を受けたこと、家庭での接し方・教え方に知恵を絞ったこと、そして本『発達の遅れが気になる子どもの教え方』がきっかけとなって、日本に帰国後、エルベテークで学習を開始したこと、やがて学習が発語に結びついたこと、集団生活の中で親が驚くほどの成長を示したこと、家庭ではきちんと学習の時間をつくり、そこでは自発的に学ぶ姿勢を養うように努力していること……、そうしたさまざまな事実が語られたのでした。

 そばで聞いていて、実際に経験した保護者ならではの具体的で説得力ある話だと思いました。特に、言葉が出ていなかった状態の長男が応じる姿勢を身につけ始め、口の開け方など発音の練習を続けるうちに、「あ」という発音から「はい」という言葉につながっていった練習の成果と意義を強調されていたのが印象的でした。

 私のほうからは、すべての学習の始まりは、互いに目を見て応じる(聞く・話す)こと、そして生活の中にある小さな約束事を疎かにせずに守りやり遂げる姿勢の大切さに繰り返し触れました。いつもの教室では、多忙のためにじっくり話をする機会がなかなかとれませんが、こうした機会にお話できたことは幸いでした。

基本を見直す良い機会として

 当日は、教室の保護者のほか、友人・知り合いの方々、小学校の教師、あるいは新聞の告知記事を読まれて関心をもった方などが参加されました。

 話を聞かれた方からは、いろいろな声が聞かれたそうです。私たちも参考にしたいと思い、主催者の了承をもらってここでもいくつか紹介したいと思います。

 「具体的な話が聞けてよかった」「子どもの課題に対して常に前向きに明るく取り組んでいる姿に励まされ、勉強になった」「『診断名』がつくと、とても大きな特別なこととかまえてしまうが、基本的な関わりが聞けて良かった」など。

 また、教室に通っていると思われる方から次のような再確認の声もありました。

「日々の忙しさに追われてつい基本がおろそかになっていたことに改めて気づけたことはとても良かったです。基本を見直して、まずは自分(親)をコントロールしながら進んでいきたいと思います」

「気持ちのコントロールは子どもの問題でもあり、私の問題でもあります。気持ちをあらたに『実践』していきたいと思います」

「目を見て話す、短い言葉で指示をする、そしてほめる、すべてにおいての重要ポイントだとわかりました」

「実践すること、継続することの大切さ、目を見て話すことの重要性を改めて感じました」

「子どもの段階、課題を正確に把握していくことで、今、身につけるべきこと、次に、身につけるべきことを意識することで、効率的な教育につなげていけると思いました」

 親が気づかなければ子どもも気づけないわけですから、その意味でも多くの方にとって基本を見直す良い機会になったとすれば、うれしく思います。

 こうした機会が増えることを願っていますが、今回のセミナーは「わが子の『発達の遅れ』に直面した保護者とともに考える」というタイトルとして今後もさいたま市と川口市を中心に定期的に行なっていく計画とのことです。発達の遅れとその対応策について日頃から真剣に考えている方が周りにいらっしゃったら、声をかけてみてはいかがでしょうか。

「子どもの発達障害」という解説記事

 ところで、Uさんの体験談については、セミナー開催より前、看護雑誌の『ナース専科』でも「カンゴのゴカン」という記事の中で紹介されました。この雑誌は若い看護師を中心に幅広く読まれている雑誌とのことです。記事が掲載されたあと、Uさんは周りの看護師の方から「苦労していたんですね」と声をかけられたそうです。

 関心を持たれた編集者からの依頼で私も取材に応じました。私は、「子どもの発達障害」というタイトルで解説をさせてもらいました。特別な配慮が必要な子どもの数が増えていること、そうした子どもへの対応策として一番大切な視点は何かということなどをお話しました。

 いわゆる「発達障害」の解説では専門用語が多用されたり、その反対に情緒的なアドバイスが前面に出ていたりしますが、やはり、まずは発達の遅れをもつ子どもとその接し方・教え方の実際を知る態度が求められること、そして、課題をしっかりとらえること、打開策としては子ども自身が力を身につけるという視点が一番大切だということを強調しました。すべては私たちの教室の20年あまりの事実と実績に基づいて言えることです。

『発達障害の「教える難しさ」を乗り越える』について

 さて、もうひとつうれしい報告があります。それは、ゴールデンウィーク明けの5月中旬に新刊が日本評論社から出るということです。本のタイトルは『発達障害の「教える難しさ」を乗り越える』にしました。

 新刊をまとめるにあたって、この巻頭言でも繰り返し記したように、わが子が「発達障害」と診断されると、あるいは発達の遅れが気になり始めると、親はついひとつの病気・症状としてとらえ、その原因・背景のほうばかりに目が向き、それを探し出そうとし、結局は親としてやるべきことが曖昧になってしまう、そんな状況が広がっていることを憂慮していました。

 そして、親が向き合うべきは、むしろわが子に生活面や学習面で教えようとしてもなかなか教えられない、その困難な状態を乗り越えることなのではないか、という気持ちが強まってきました。そういう事情もあり、本のタイトルを『発達障害の「教える難しさ」を乗り越える』としたわけです。

 実は当初、12年前に同じ日本評論社から刊行した『自閉症児の学ぶ力をひきだす』の続編にする予定でいました。前著に登場した子どもたちがいまでは大学生や社会人になり、その具体的・継続的な実例の紹介は有意義だろうと感じたからです。また、いま注目される就労問題とも関連するのではないかと思っていました。

 ところが、原稿をまとめるにしたがって、「教える難しさ」という子どもの接し方・教え方の核心を伝える必要性をますます強く感じるようになりました。そのため、この思いに即して、季刊誌の巻頭言や保護者の声などで紹介した、新しい情報も加え、より幅広い方々に読んでもらう本にしたいと考えるようになったのです。

 季刊誌100号の「教師と医師。その意見」という記事などを手がかりに、さまざまな親子の実例、エピソードを追加し、さらに私どもの22年間の事実と実績を基にした家庭学習のヒントにも触れました。懇談会などで印象的な話をしてくれた春野先生の成長の記録と手記も紹介します。

 発達の遅れをもつ子どもへの接し方・教え方で、世の中のあり方が親子の思いとずれてしまっていること、効果的な対応とはどのようなものかがわかってもらえる内容になっていると思います。刊行の際にはぜひ日々の家庭学習の参考にしていただければ、幸いです。

 ところで、本をまとめる段階でいろいろな保護者の方から診察やその後の療育の様子などを確認することになりました。そこで改めてわかったことは、とても効果的とは思われない接し方・教え方がまかり通っているという事実です。その意味でも、私たちが変えていかなければならないこと、やらなければならないこと、取り組まなければならないことがたくさんあることを再確認した次第です。


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