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季刊誌―エルベテーク

2021年 春季号 アメリカからのレポート24:学校の先生から「指導していてやりがいを感じる」と評価されたKさんの成長について

アメリカからのレポート 24
エルベエデュケーション ディレクター Fumie Nesbit

学校の先生から「指導していてやりがいを感じる」と評価されたKさんの成長について

川口教室、ロサンゼルス教室での学習とオンライン学習を継続して……

 アメリカ第一号生徒のKさんは現在ハイスクール11年生。あと1年ちょっとで高校を卒業されます。ロサンゼルス在住のKさんは、5歳のキンダーに入学する前の夏休みから日本の川口教室に通いはじめました。ロサンゼルス教室、そして、現在は、オンライン学習を継続され、来年には日本の高校卒業資格であるディプロマを取得して卒業をする予定です。

 Kさんは、3歳のとき、幼稚園の先生から、「言葉が遅い」「何度呼んでも振り向かず、団体行動では話を聞かない」などと指摘され、アメリカの療育機関のリージョナルセンターで診断を受け、高機能自閉症と診断されました。

 カリフォルニアでは、診断が下りるとリージョナルセンターや学校区より、様々なセラピーを受けることができるようになりますが、Kさんの場合、始めの数年は、「セラピー漬け」というほどの大変忙しい日々を送りながらも、なかなか効果的といえるものではなかったようです。セラピーでは、「飽きると、すぐに思い通りにさせたり、ぐずると『今日は気分じゃないみたいだから』と切り上げたり」、キンダーでは「落ち着いて座っていられないと、エイドさんがエアボールに座らせたり、おもちゃを差し出したり、外へ連れ出したり」と、子どもの好きなようにしている対応に、お母さまは違和感を感じていらしたそうです。また、「自閉症」という診断結果が頭を離れず、子どものできないところばかりを見ていた時期もあったようです。

 ロサンゼルスの日系書店で、エルベ代表・河野俊一著『発達の遅れが気になる子どもの教え方』を偶然見つけたことをきっかけに、その夏休みの一時帰国では相談会に参加され、その翌年から夏休みを利用した学習をスタート。初回学習をご夫婦でモニター見学された際、きちんと座り先生の目を見て話を聞いているKさんの姿に、お父さまが「誰? あの子誰?本当にうちの子?」と驚かれたそうです。それまでのKさんは、自分がしたいことが最優先で、応じることを教わっていない状態でした。しかし、優先課題はなにか明確にし、まずはしっかりと見る、聞くことを学ぶことで、学習する姿勢が整い、先生の指示や指導に応じようと努力するようになっていきました。それまでは、セラピーを通して「コミュニケーションができるようになれば、学習にたどりつける」と思っていたご両親でしたが、学習を通して学ぶ姿勢、コミュニケーションの力を伸ばす、というエルベの考え方に賛同され、前向きに子どもと向き合うようになり、その親子での努力が確かな力になっていきました。

力を伸ばすにつれて状況が一変

 家庭学習とエルベでの学習で、Kさんが少しずつ力を伸ばしていくと、現地校の先生たちも変化に気付き、徐々に応援してくれる人が増えていきました。もちろん、理解を得ることができず、学校では「特別」な扱いを受け、指導がされなかったり、「離れ小島のビジター状態」の大変な時期もありましたが、努力を積み重ね、学習力をつけていくと、周りのクラスメートや先生に認められるようになっていきました。猛特訓した基礎計算や暗記力が、本人の手ごたえと自信につながりました。そして、家庭学習を軸に、学校との連携を大切にしながら、Kさんご両親は子どもの学ぶ環境づくりに努めてきました。

 アメリカでは、訴訟社会である影響か、特別支援教育においても、学校とは「戦闘態勢」で交渉に臨むケースが多いと聞きます。学校とのやり取りの中で、時には、子どもの力を伸ばすことより、セラピーやサポートなどの「サービス確保」が優先されてしまうこともあります。また、学校側と保護者側と意見が合わない時、弁護士を立てたりすることもあるほどですが、そのような状態では、子どもを指導する当事者の先生たちが気持ちよく子どもを応援することは期待できません。

 Kさんのご両親は、その「闘って」というアドバイスも受けたそうですが、エルベからのアドバイスにしたがって、むしろ学校スタッフとの信頼関係を築き、子どもの課題を理解してもらうことに力を注がれました。子どもの学校生活に関わっているすべてのスタッフとの日々の連絡や相談はもちろん、一人ひとりへの気遣いを怠らず、ミーティングでは差し入れを持参されたり、手書きのお礼カードを準備され、些細なことのようですが、一つの橋渡しとなりました。また、エルベの助言のもと、新年度になると新しく担当する先生方やスタッフ全員に、保護者からみた現在の様子や課題、効果的な接し方をレポートにまとめて渡し、密な連携と協力を得るように心がけています。

IEPミーティング本来のチーム体制が機能

 毎年、Kさんの年1度のIEP(個別教育計画)ミーティングに私も参加をさせていただいておりますが、どのスタッフもKさんにしっかりと向き合い、成長を期待していることがとても印象的です。保護者とそれぞれのスタッフが知恵を出し合って、子どもが課題点を乗り越え、目標達成するように働きかける、IEPミーティングの本来のチーム体制が機能できているのです。そのおかげで、Kさんも先生方を慕い、期待に応えようと頑張ることができるようになりました。

 小学校のうちは特別支援クラスに在籍している時期もありましたが、小学校高学年からはどの子どもも同じクラスで学ぶチャータースクール(公立学校だが、それぞれ特色のある学校)へ転校しました。アメリカでは公立学校でも、1校1校で教育の質に差があるのが現状で、そのため、アメリカでは学区内の学校以外の選択肢もあります。Kさんのご両親は、子どもが学べる環境を求め、学校選びも慎重にしました。中学校からは各科目の担任、特別支援の担任、エイドさん、そしてご両親が連携をとって、学校生活をサポートしていきました。自立が求められる中学校生活で、クラス移動や時間管理は最初のころは上手くいかないこともありましたが、スケジュール帳をつかって整理をすることや報告・連絡・相談をすることを覚えていきました。

 中学校最後のIEPミーティングでは、高校、そしてそれ以降のことについても話し合いが行われましたが、印象的だったのが特別支援の先生の言葉でした。「聞き取りの弱さ、読解や言語面の理解など、課題はあるものの、今まで見てきた生徒の中で、学力診断テストの中の計算部分を最後までやり切ったのはKさんがはじめて。あいさつができ、優しくて、人一倍の努力家で、とにかく指導をしていてやりがいを感じる。この1年間で本当に成長した」と。その後、中学校卒業式では、開会時のアメリカへの忠誠の誓いの代表として選ばれ、立派にその役をこなしました。

カレッジをめざし勉強中

 実は、中学校卒業時のIEPでは、高校はディプロマ(高校卒業資格)課程ではなくサーティフィケート課程で進むことになっていました。これは、高校を修了したものの、必履修科目をすべて履修していない課程のため、高校での履修科目の一部は一般とは異なるものになり、カレッジなどの高等教育への道が狭まる道でした。しかし、実際に高校に入学し、前向きな態度や学習能力が認められると、ディプロマ課程に変更することができたのです。難しくて苦戦する学習内容はもちろんありますが、自分から先生に質問をしたり、オフィスアワーを利用して補習をうけたりと、積極的に学習に取り組むことができるようになりました。

 コロナウィルスの影響で、2020年の春からは、リモートラーニングでオンライン授業を受けることになりました。最初の頃は、生活パターンの変化とオンライン授業のルールに慣れず、不安にかられることが増え、不適切な言動も見られましたが、その都度、ご家庭で念入りに注意をし、エルベの学習でもしていいこととしてはいけないことについて注意をするようにしました。現在では、不適切な言動も減り、自分で学校の課題などを把握して取り組んでいます。高校卒業後の進路はまだ確定していませんが、Kさんはカレッジへ行ってアートやデザインに関わる勉強がしたいと日々励んでいます。こちらからも精一杯応援、サポートをしていきたいと思います。


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