Yさん 小学4年生 (1歳11か月入会 発達遅滞)
親の「ブレない」姿勢や態度が、子どもたちの道しるべとなり、教わる力をつくっていく
当初、「勉強させる」のは負担と思った
初めての子ということもあり、息子には生まれた当初より、他の子と比べて大きな違いを感じることもなく育てていました。1歳になった頃、泣いたり笑ったりする時に、両腕を水平にピンと緊張したように伸ばす動作に違和感を覚え、地域の療育センターに向かったのが始まりです。そこで脳波やCTの検査を受けましたが、医師からの「特に異常はありません。しばらく様子をみましょう」という言葉は、私たち夫婦の漠然とした不安を解消してくれるには、程遠いものでした。
その後日常生活では、録画したテレビ番組を何度も観るなどのこだわりが随所に表れてきます。自分の感情を表現することが少なく、心も常に緊張しているように見受けられました。育てにくくはないのですが、子供っぽくないと感じられる面もありました。療育センターで行ったテストでも、診断名を告げられたわけではないのですが、知能の発達に半年ほどの遅れがあるという結果でした。
なんとかしなければと、インターネットでさまざまな病院や教育機関を調べ、エルベテークを見つけたのです。エルベテークと同じような教育理念や指導法を掲げているスクールは、他にひとつもありませんでした。この歳から「勉強をさせる」のは子どもの負担になるだけ、それよりものびのびと育てたほうが良いのではないか、と周りの人間は言うだろうなと思ったのですが、エルベテークの資料を読んだ私たちの両親の「ぜひお願いしてみたら」という言葉が後押ししてくれました。
早速、指導相談会に参加し、その場で入会を決めました。2歳になる直前でした。3ヵ月ほど経った頃、教室での学習の様子をモニターで拝見した時は、息子の学習態度に驚きました。言葉が出てきたのも遅く、物事へ反応する様子も心配だった息子が、先生の指示に真剣な表情で向き合っていたのです。その後はエルベテークの先生方の熱心なご指導を受け、小学校の普通学級に無事入学することができました。
子どもの道筋をつくってあげる親の役割
入学後しばらく経った時の事です。体育の授業で、かけっこのルールがすぐに理解できない息子にイライラしたクラスメイトが、息子を何度も蹴るという出来事がありました。2年生になってからは、担任より「特別支援学級に通ってサポートを受けたほうが良いのでは」と提案されました。一部の授業に補助教員がつく授業があるのですが、その援助がないと学習が進められないことが多い、指示を与えても理解ができず、時間内に作業を終えられないといったことがその理由でした。
エルベテークに相談したところ、「普段の学習の様子や立ち振る舞いを見ていても、○○くんは特別支援学級に通う必要はないと私たちは考えています。担任の先生には『確かに課題となるところがあるかもしれませんが、家庭でもしっかりと指導しますので、もう少し様子を見ていただけないでしょうか』と伝えてみて下さい」とアドバイスをもらいました。とても心強く感じられ、担任との話も円滑に進めることができました。同時にこの子の道筋をしっかりと作ってあげることが、私たち親の責任だと改めて強く思いました。
3年生になってからはクラス替えもよい方向に働いたのでしょうか、息子は引っ込み思案な性格ですが、もともと穏やかで他の子にも気をつかえる面もあり、休み時間の大好きな鬼ごっこを通じて、次第に友達を増やしていきます。家庭でも、クラスメイトの話をよくするようになってきました。放課後、外に遊び出かけるのも、低学年ではなかったことでした。
小学校に入学して4年経ちますが、異動などにより毎年違う担任に教わることになりました。以前はどうすれば新しい担任に息子のことを理解してもらえるかということばかり考えていましたが、最近ではこの子の良いところを見つけてもらおう、そのためにはクラスメイトと同じようにできることを増やしていかなくては、と少しですが前向きな考えに変わってきました。
基本的な学力が自信に結びつく
また、中学年になってきてから、学力の大切さを改めて実感しています。基本的な学力が備わっていると、多少学校生活に問題があるケースでも、学校の先生方の反応も少しずつ変わってきます。受け入れていただく際に良い影響を与えるのではないでしょうか。子ども自身の気持ちにとっても、大きな支えになると思います。
息子の場合は、算数の一部の授業が、自己申告制の進度別クラスが設けられていているのですが、そこでエルベテークで学んだ成果を出せたことが、大きな自信に結びついたようです。教科や単元によって得意・不得意の偏りはありますが、エルベテークで身につけた学力の底上げによって、大部分を占めていた、苦手なことへの劣等感を軽減して、少しずつ前向きな気持ちで学習に取り組めるようになってきました。
しかしながら、入学当初からの「忘れ物が非常に多く、身の周りの物の管理ができない」「初めてのことやルール、初めて見る問題を理解するのが苦手」「手先が極端に不器用」などといった課題も依然として残っています。私たち両親が知らないだけで、それ以外の問題も学校生活では少なからずあるのかもしれません。
家庭学習では「この問題は難しいけど、こういう考えをきたえられる良い問題だね」「この基本問題は何度も解いているはずだから、自分に厳しく、100パーセント正解で当たり前だという気持ちで!」などと、問題について説明したり、私たちの考えを時々必要に応じて伝えるように心がけています。
そうすることで、単にやらされている学習なのではなく、両親も一緒に、問題に対し真剣に取り組んでいるのを実感させることができると考えているからです。学習面でも親子の信頼関係を築けることができれば、厳しい指導も受け入れやすくなるのではないでしょうか。
問われるのは親の姿勢・態度
近頃、メディアなどでよく「ブレる」「ブレない」という言葉を耳にします。どんな時でも、物事をよく見て、よく聞く、学習や日常生活の中のいろいろな約束事を守り、やり遂げさせるために、保護者の毅然としたその「ブレない」姿勢や態度が、子どもたちの道しるべとなり、教わる力をつくっていくものだと思っています。本人の意識をさらに高めて、エルベテークの先生方のお力をお借りしながら、これからもさまざまな課題と向き合っていくつもりです。
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