Nさん 小学4年生 (年少2月入会 発達の遅れ)
自省できるようになった息子の成長
悔やまれる回り道
1歳2カ月でようやく歩き出した息子は不器用で、何かとすぐ泣き、言葉が遅く、呼びかけへの反応が鈍い子供でした。1歳6カ月検診で相談したところ、区の育児サークルを紹介され、月1回参加することに決めました。しかし、集団遊びにまったく関心を示さず、常駐する心理相談員の方にどうすればよいのか尋ねても、「心配なら発達検査を受けては?」と言われるだけ。何のための専門家なのかと困惑しました。
私の話を聞き、夫が発達関係の本を購入してくるようになり、その中に武部隆氏の『自閉症の子を持って』がありました。二人で読み話し合いましたが、この時は私の弟も言葉が遅かったこと、息子が偏食はなくトイレトレーニングはできていることなどから、幼稚園生活が始まれば成長していくのではという結論になりました。しかし、半年後の幼稚園面接の結果は不合格。この結果から、2年保育の区立幼稚園に入れるまで、専門家の力を借りる必要があるとの考えに至りました。
週2日午前保育の幼児教室に入れ、区の保健センターで紹介された言語教室に週1回1時間、通うことにしました。発達検査を受け、認知の問題はそれほどでもないと言われたものの、改善できるのかという質問に明確な回答が得られませんでした。しかし、もはや一刻の猶予もなく、通い始めました。
この教室は、授業中親の付き添いが必要でした。息子は当初指示に従っていましたが、次第に従わず勝手にふるまうようになりました。幼児教室でも依然集団行動ができないという状況の中、夫が『自閉症児の学ぶ力をひきだす』と『発達の遅れが気になる子どもの教え方』を買ってきました。武部氏の本にあったエルベテークのことが気になって、調べていたというのです。マンツーマンの教科学習による事例を読み、必要なのはこういう指導ではないかと思い始めた頃、入園面接の日がやってきました。面接後、園長先生から病院で発達検査を受けることが入園の条件と言われてしまいました。
帰宅して即、エルベテークへ相談会申込の電話をかけ、親子3人、電車で片道1時間かけ川口教室に伺いました。息子が指導を受けている間、代表と懇談しましたが、質問への回答が明瞭で、言語教室との違いに驚きました。また息子に対する毅然とした指導を拝見し、ここに通わせ、教えていただきながらやっていくしかないとその場で入会を決意しました。入園前の2月、4歳0カ月のことでした。
希望と不安の中で
週1回1コマの授業が始まりました。「姿勢を保ち相手の目を見て聞くこと、話すこと」に留意し家庭学習も開始。1カ月位で教えやすくなり、同時に「鉛筆を正しく持てない」「形状の把握が苦手」「注意されたり、気に入らないことがあると独り言を言って反抗する」「集中が続かない」という問題点が明らかになってきました。そこで、家庭学習の時間を増やす必要を感じ、夫と相談し、土日も午前中必ず学習し、決めたことは必ずやり通させるようにしました。10月からは2コマに指導回数も増やし、集中力向上のため、先生からの助言でストップウォッチを使い始めました。ひらがなの習得に大変苦労したものの、徐々に作業力、会話力がついてくるのが実感できました。
ただ幼稚園生活は大変でした。運動会や生活発表会にうまく参加できず、特定の子を叩くという行動が出てきたのです。夫も私も普通学級入学を考えていましたが、親の見栄で
かわいそうなことをしていると園長先生から散々言われました。しかし、エルベテークは「今の状態では入学後は付き添いが必要になるでしょう。そして、離席や加害行動をしないようにみていくことが大事です」とおっしゃり、その心づもりで就学時健診に臨みました。けれども終了後、校長先生から質問への応答が遅すぎるので就学相談を受けるよう言われ、悪いことに同じ頃、私が健康診断でひっかかり手術を告知されました。入院中は夫がエルベテークへの送迎ができるよう学習日を土曜日に変更していただき、息子の世話を実家の両親に頼みました。就学相談の結果、普通学級への入学が決まり、そして手術。翌日が東日本大震災でした。被害の甚大さに愕然としつつ、今大変だけどもっと大変な方達がいる、頑張らねばと思ったことを覚えています。
うまくいかなかった担任との関係
4月。入学式は無事終わり、50代の女性の担任に教室からの助言に従って作成した「学校生活においてご配慮いただきたいこと」というレポートをお渡しし、夫婦で挨拶をして帰りました。翌日校長先生から呼び出しがあり、放課後、担任、養護教師を交え懇談が持たれました。担任がメモを元にその日一日の息子の行状を読み上げ「支援級が妥当です」と通告。校長先生も「無理はいけません」と追い討ちです。「教育委員会の普通級への入学決定を尊重したいので明日から付き添います」と答え、どうにかその場を収め帰宅しました。エルベテークに報告したところ、「毎日様子を連絡ください」とのことでした。
翌日から付き添いが始まりました。息子を一番後ろの席にしていただき、姿勢が崩れたら直し、誰かを叩きそうになれば事前に止めなければと一時も気がぬけません。給食当番や掃除を嫌がり逃げようとするので、二人羽織のようにして教えました。
また、4月下旬から始まった運動会の練習では「おうちに帰る!」とその場に座り込んで泣き、担任はその度激怒。他にも挨拶を無視したり嫌味を言う先生方がいて、教室にずいぶんこぼしました。しかし、息子を落ち着かせることだけ考えるよう諭され腹を括りました。クラスの子供達が大変親切で「ここに通わせたい、頑張ろう」とも思いました。幸い運動会は何事もなく無事終了。息子は落ち着き始め、6月1日付き添い解除となりました。
その後は毎朝、注意事項を約束させ、学校に送り出していましたが、夏休み直前、図工の時間に息子がクラスメートの髪をはさみで切るという事件を起こしました。すぐエルベテークに連絡し、対応を教えていただいた後、学校へ行きその通りにしました。放課後、菓子折り持参で相手の子の家に息子と謝罪に伺い、幸い許していただけましたが、校長先生から夫婦で懇談に来るよう呼び出されました。教室にどのように対応すべきか相談してから臨みました。果たして懇談の内容は、息子に介助員を付けたいが、今期は時間切れとなってしまったので、休み明けに区に申請するというものでした。「2学期の状況を見てから決めて欲しい」と懇願し、どうにかその場は凌ぎましたが、新学期になり音楽会の練習が始まると、また「おうちへ帰る!」と泣き、他害行動再開です。相手の子の家へ謝罪の電話を入れ、担任に怒られ、息子に毎朝注意し、練習を一緒にやるという毎日でした。そして迎えた音楽会。何と生まれて初めて立派にやり通したのです。この日を境に他害行動も終息に向かいました。しかし、担任は全授業に介助員を付けることを強硬に主張され、区に報告となりました。区の見解は離席をせず、奇声をあげない児童に介助員は付けられないが、図工のみ認めるというものでした。このことで、息子を良くしていくことにのみ全力を注ぎ、結果として周りの理解を得るようにしなければならないと肝に銘じました。
流れができた2年生時代
2年生になり、40代後半の女性が担任となりました。穏やかな方で安心したのも束の間、校長先生が区に息子の支援チームを組んでもらいその指示を受ける旨、担任の頭越しに通告してきました。即、エルベテークに連絡。担任の人柄からエルベテークのことをお話しても問題ないだろうということになり、資料をお渡しし、家庭ではこういう教育をしている、学校では先生と相談しながらやりたい旨を伝えました。先生も快く了解してくださり、以後担任が変わる度にレポートとエルベテークの資料をお渡ししてお願いするという流れが定着しました。この先生の下、息子はようやく周りに関心を持ち始め、積極的に話すようになりましたが、感情をコントロールするにはまだほど遠い状態でした。
転機になった3年生時代
3年生になるとクラス替えがあり、担任は30歳の若い女性となりました。学校では泣かなくなり、先生の指示にも素直に従えるようになってきました。しかし、何故か指しゃぶりをするようになり、他の子から先生の元に苦情が殺到。家でも注意し、先生も口頭で注意するのですが直りません。2学期から先生が考えた窮余の策は、連絡帳を使った○×チェックでした。指しゃぶり、授業中音を立てない、姿勢等チェックを付けていただいたところ、次第に息子自身も注意するようになり、○が増えていきました。
この時期、読解力のなさでテストの点が伸び悩むという問題も出てきました。私は戻ってきたテストは必ずやり直しさせ、気になる点を付箋にコメントして付け、すべてエルベテークの先生にお見せしています。指導の参考にしていただこうという趣旨ですが、10月国語の先生が変わり、今までと違った形式で宿題が出されるようになりました。息子の弱点を非常に突いた内容で、本人は嫌がり家庭学習は大荒れでした。しかし先生と相談しながらやらせ、根負けしたのか1月から素直に取り組み始めました。それまでエルベテークでも気にいらないことがあるとまだ泣いていたのですが、この頃から泣かなくなりました。
行動面が良い方向に向き始めた2月、学帽をクラスメートに隠されるという事件が起きました。教室に確認しながら連絡帳を通じ先生にお知らせしたところ、帽子を探し出し、クラスで話し合いをしてくださいました。報告を受けたその内容は、大変素晴らしいものでした。また、これを機に息子に対するクラスの雰囲気が大きく変わったように思います。
ずいぶん力をつけた4年生の今
クラスは持ち上がりで、担任は変わって30代の女性となりました。6月、授業参観に行くと息子の姿勢や態度が大変よくなっており、挙手をして発言していたので驚きました。エルベテークで行われた3月のグループ学習会で息子を担当してくださった先生から褒められてはいたのですが、目の当たりにして本当に嬉しかったです。学校では他のクラスの先生達からも「この1年で大変成長しましたね」と言われるようになりました。
整理整頓が上手で、ノート指導に力を入れるという担任の下、息子はその方面でもずいぶん力をつけました。運動会や音楽会に、何と楽しんで参加するようになりました。「1年生の時は最低だったけれど、4年生になって僕は頑張っている」と今、本人は言います。泣いたり、他害行動をしたことについては「怖かったから」とのこと。何はともあれ、自省できる人になれたのは本当にありがたいです。
しかし息子にはまだ問題が多く、夫も私もこれで良しとはまったく思っておりません。エルベテークの指導のおかげでさまざまな力がついてきたのは事実ですが、気持ちを理解するというところまでまだ到達していません。よく話せるようになりましたが、文法的におかしい点が多々あります。息子はまだ友達がいないのですが、この点の克服がカギになるだろうとも思います。エルベテークの提案で、8月から学習は読解と作文中心となりましたが、成果が出せるようしっかり学習させます。算数も難しくなってきましたが、うまく教えられない時は、教室に電話やレポートで質問して解決しています。どの先生も説明がお上手で大変助かります。息子が将来自立できる大人になれるよう、今まで以上に先生方の力を借りて頑張っていこうと思います。宜しくお願い致します。
最後になりましたが、仕事で超多忙ながら肝心のことでは子育てを支えてくれた夫、また私達夫婦の考えを支持し応援してくれた両親達に、まだ先は長いですが、ここで一度深く感謝の気持ちを伝え、筆を置きたいと思います。
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