Tさん 小学5年生 (年長の7月入会 発達遅滞)
転居先のデュッセルドルフでもインターネットを利用して学習中
落ち着きがなく、意思疎通の図れなかった息子
私の息子はこの4月で小学6年になります。エルベテークには幼稚園年長の7月からお世話になっています。
通い始める前までの息子の様子は言葉が遅く、たとえば公園などでお友達と遊ばせようとしても、人の話を聞けない、意思疎通が図れない、勝手にふらふらと違うところに行ってしまう、といった具合で、当時楽しいはずの公園遊びも、いつしか周りの親御さんからの目を気にするあまり、親にとっては苦痛な場となっていました。
周りからは「男の子は言葉が遅いもの、いずれ意思疎通が図れるようになるから大丈夫」とよく声をかけられたものです。しかし、こうした場面が増えれば増えるほど親としては「果たして大丈夫か」という不安や焦りと日々葛藤をしていたように思います。
保育園に通っている時分、教室で見る息子は他人とは一切関わろうとはせず、自分の興味のあるものだけに没頭している、というような様子で、常に補助の先生がついている状況でした。生活発表会でも親の顔を見ると泣き叫び、皆に迷惑をかけるので、本人に姿が見えないように人影に隠れてこっそりと見ているような状況でした。その後、幼稚園に通い始めてからも言葉自体は少しずつ出てきてはいましたが、落ち着きがない、人の話を聞いて行動ができない、というような様子は相変わらずでした。
この時期、専門機関で検査も受けさせました。判定は「特に問題なし」という結果だったのですが、今思い返すとこれは親の精神安定のために実施したに過ぎなかったのかもしれません。
この頃から「やはり、息子をどうにかしないといけない」と思い、地域の発達相談に定期的に通いました。しかし、我々の思いとは裏腹に、「成長を待ちましょう」「大丈夫です」「このままで良いです」といったコメントばかりで何一つ、何をどのようにしたら良いのか、という具体的な指示を貰うことはいっさいできませんでした。当時は小学校入学を来年に控え、「息子にとって何が最善の方法なのか」と毎日悩んでいました。
コミュニケーション能力の向上、そして学校への配慮
そんな時、義母から1冊の本を受け取りました。それがエルベテークの本でした。私達はその本を漁るように読み、「これだ!」と思い、意を決し相談会の申し込みをさせて頂きました。
その時に模擬授業をやって頂いたのですが、その衝撃を今でも鮮明に覚えています。「目を見て話を聞くこと、目を見て話をすること」、コミュニケーションにおける重要な要素を息子に丁寧にかつ粘り強く言葉がけ頂きました。そして終了後に「ご両親、ご覧のような状況です。今からでも遅くありません」とお声を掛けて頂き、親としては本当に藁にもすがる思いで入塾を決めました。
エルベテークに通い始めて、少しずつではありましたが、コミュニケーション能力にも改善が見られるようになってきました。ただそうした状況下でも小学校入学については、友達との関係、担任との関係作りなどすべてが不安な状況でした。親としては「普通学級で皆と同じように勉強をさせたい」という希望を持っていましたが、「果たしてきちんとやっていけるだろうか」、そのことが一番の不安でした。
しかし、そうした時にもエルベテークから学校側への対応についてきめ細かくアドバイスを頂戴することができました。入学式後に担任の先生に対し息子の様子や指導上ご配慮頂きたい点について説明を差し上げ、何とか小学校生活をスタートすることができました。
アドバイス通りに家族みんなで取り組む
入学後は予想していたこととはいえ、毎日のように問題が起こりました。授業内容はもちろんのこと、給食の食べ方、学校行事への準備に至るまですべてが、まだ本人の力不足のため改善と対応が必要な状況でした。そのつどエルベテークに内容を相談し、学校側への対応についてきめ細かくアドバイスを仰ぎました。
たとえば息子の学校での様子を把握するため、担任の先生と学校での様子、家庭での様子について書いたノートのやりとりをほぼ毎日続けました。また本人とは約束カードを作り、毎日それぞれについて確認し、家庭での学習や学校への対応に役立てるようにしていました。
それから特に小学1、2年生の頃は学校側の了解を得た上でほぼ毎日のように学校に出向いては、本人の隣に座り様子を確認するようにもしておりました。当時、妻は生まれたばかりの娘と一緒に学校に出向き、授業の合間に娘にミルクをあげる、というような生活で、今思い起こすと体力的、精神的にも相当に大変な時期でした。
小学3年生になると友達関係の問題が大きく加わるようになりました。周りのお子供達も精神的に成長をしていくなか、友達から息子に対する嫌がらせやできないことに対しての風当りも強くなってきたためです。
もちろん、この時も学校、担任の先生とのやり取りや面談はそのつど実施していました。また、実際に学校に出向き、本人の様子を確認したり、登下校の様子も確認したりと対応していたのですが、結果的に学校側からは満足のいくような対応を実践して頂くことができませんでした。
この間、エルベテークからは継続して「まずは周りに認めてもらえること、本人のできることを増やしていくことが重要」とのアドバイスを受けました。たとえば運動会で隊形移動をうまく理解していないと聞くと、家族皆で猛練習して学校に行かせました。リコーダーがうまく吹けないと聞くと、深夜になるまで一生懸命皆で練習をしました。我々親も正直きつかったですが、息子は我々以上に当時大変だったと思います。でもけっしてあきらめずに歯を食いしばって頑張ってくれました。
学校の様子を聞いて家庭での過ごし方に活かす
そうこうしているうちに私のドイツ/デュッセルドルフへの転勤が決まりました。「環境を変えることはある意味良いことだろう」と思う半面、一番の心配事はやはり4年生になった息子のことでした。学習をどう続けたら良いか、果たしてやっていけるだろうか、という不安がありました。
そんな時、ある方からインターネットでの双方向学習のことをお聞きし、エルベテークにご提案した結果、快諾を頂くことができました。今では週2回、朝学校に通う前に1時間のインターネット学習が日課となっています。
最近では自ら考えて行動できる機会も増え、宿題も自ら取りかかるという姿勢がずいぶん見られるようになりました。学校とのやり取りに関しては担任の先生とはできる限り毎日の下校時に学校へ出向き、当日の様子を聞くようにしています。また、それを家庭での過ごし方に活かすようにしております。定期的に時間を割いて頂き、じっくりと話し合いをさせて頂く場も設けて頂いております。学校とのこうしたやり取りを通じて、今では私共のお願いに真摯に耳を傾けてくださり、理解した上で個別の課題に対し適切に対応してもらっています。本当に有り難いことと思っております。
ドイツに来てからもう1年8ヶ月になります。休日にはよく近隣の国々に出かけて、見聞を広めています。昨年の夏、スペインのバルセロナに家族で旅行したときのことです。息子がレストランでトイレに行きたいとと言い出しました。私たちは息子に「英語でトイレどこですか?」と質問しておいでと言いました。息子は少し考え店員さんに英語で質問してトイレの場所を教えてもらうことができました。トイレから帰ってきた息子は嬉しそうに「僕の英語通じた」と私達に言ってきました。それからは積極的に自分で英語を使うようになってきました。学んだことを活かしてコミュニケーションをとる喜びを味わい、よい経験をしていると思います。
このように息子もこちらに来てから色々とできることが増えてきました。また何より息子の表情が以前と比べると明るく、柔和になったことをとても嬉しく感じます。「少しは自信が出てきたかな」とも感じています。こうした息子の成長を喜ばしく思うと共に引き続き皆様のお力を借りながら、今後は本人の自律・自立をより促していければと考えております。
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