Kさん ミドルスクール6年生 11歳 ロサンゼルス教室(年長7月入会 自閉傾向)
一番大切なことは『学習』という視点で子供としっかりむきあうこと
この度ロサンゼルスにエルベテークが開校したことを、心から嬉しく思っております。エルベテークと出会えたから今の私達がある――私達親子にとって、エルベテークは本当に大きな存在だと確信しています。
「ほんとうにこれでいいのか」と思い悩む毎日
11歳の娘は、5歳から毎年夏の間、日本のエルベテークに通っています。赤ちゃんの時から癇癪、そして言葉の遅れなど、発達に心配はあったものの、近所に同年代の子供がいないこと、また英語と日本語両方が耳に入る環境にいることから、言葉の遅れは仕方がない、そしてそのストレスで問題行動が起こっているのでは、と勝手に思っていました。けれども3歳になった時に通い始めた幼稚園の先生から、言葉が遅いこと、何度呼んでも振り向かず、団体行動の時に話を聞かないこと、友達とも遊ばないことをはっきり指摘していただいたので、すぐさま、リージョナルセンターで専属のサイコロジストのテストを受け、高機能自閉症と診断されました。 それまでは娘の遅い成長に対して、「私が母親として未熟な分、娘はゆっくり成長しているんだわ」と思っていました。しかし、リージョナルセンターに行ってから、何ができない、何が遅いなどと娘のマイナス面ばかりを見るようになりました。また、娘は本当に脳の障害を持っているのかという勘ぐりばかりが頭の中を回るようになっていたのです。その後も本当に彼女が自閉症であるのかどうかとの診断結果にこだわってばかりいました。
診断が下りたお陰でリージョナルセンターや学校区のサポートでさまざまなセラピーを受けることができ、プロの方々の力を借りられたことは心強いかぎりでした。しかし、ご褒美をぶら下げた上での機械的な訓練ともいえるようなセラピーも一部にありました。また、娘が飽きるとすぐに思い通りにさせたり、ぐずると「今日は気分じゃないみたいだから」と切り上げたり、問題行動について相談しても「自閉症はそういうものだから」というだけの答えには違和感を持ちました。Pre-Kやキンダーでは、娘が落ち着いて座っていられないと、エイドさんがエアボールに座らせたり、おもちゃを差し出したり、気分転換に外へ連れ出したりすることがあり、そのような特別な対応にも、母親としては何か納得できないものを感じていました。その一方で、私自身、セラピーに追われる忙しい娘を、家ではただただ甘やかしていたような気がします。手探りしながらも、「ほんとうにこれでいいのか」と思い悩む毎日でした。「いくら追求しても答えはない。一番大切なことは『学習』という視点で娘としっかり向き合うことだ」とは、ずいぶん後になってわかったことでした。
今までの認識とはまったく逆の考え方に出会う
その後、自閉症に関する書物を次々に求めて読み耽りましたが、どれも娘にしっくり当てはまらないように思いました。そんな時、日系書店にふらりと立ち寄った際にエルベテーク代表河野俊一先生の著書、『発達の遅れが気になる子どもの教え方』の本に出会ったのです。 本の中の、“言葉やあいさつ、日常生活のルール、そしてコミュニケーションなど、いろいろなことを教えていける土台をつくることがまず第一歩であり、子供に学ぶ姿勢(教わる力)を身につけさせることが最優先”という言葉にはっとさせられました。それまで私は、「コミュニケーションができるようになれば、学習にたどりつける」「セラピーや娘に合う療法を見つけることによって色々な問題点がなくなれば、学校で学習できるようになる」と思っていました。エルベテークは「しっかり見る、聞く、という姿勢をつくることによって、自ら学習できることができ、それが問題行動をなくすことにつながっていく」という、今までの私の認識とはまったく逆の考え方を示してくれたのです。 その直後の夏休みに日本へ行った際に、すぐさま指導相談会を申し込みました。その時にいただいたエルベテークの指導指針12項目は、まさにすべて「こうなって欲しい!」と思いながらも、「無理だろうなあ」と半ばあきらめていたものでした。そして、相談会の後、「いろいろなことができるお子さんです。またいろいろなことをやり遂げる可能性を持ったお子さんです。学習の姿勢と基本をきちんと築き上げて、そして伸ばしてあげたいですね」と言っていただきました。それまで、「何ができない、何が問題、そしてその問題が起こらないように、起こさないように」とだけ考えていたので、前向きに彼女と向き合うことの重要性に初めて気付かされた思いでした。 そして、1年生を目の前に控えた次の年の夏休み、エルベテークに通うことにしました。実家から川口まで2時間近くかけて通うのです。学習時間は1回につき3時間でした。私は事前に、「娘はとても3時間も座っていられませんので、きっと先生方にご迷惑をおかけしてしまいます」と正直にお話ししました。アメリカでは2時間のセラピー中でも、外へ散歩に連れ出したり好きな工作をしたりとアクティビティーに工夫が必要でした。たとえ好きなことをして座っていても、足を立てたり爪を噛んでみたり、独り言を言ったり、横を向いたり、10分と落ち着いて座っていられなかったのです。疲れたり飽きたりするとすぐにセラピストから逃げ出して、走り回ったり寝転がったりという状態でした。
娘が喜んで教室に通い続ける理由
エルベテークでの学習初日、次の日には夫がアメリカへ帰ってしまうために、夫婦一緒にモニターを通して学習の様子を見ることにしました。「ご迷惑をかけているんだろう」と思いながらモニターをのぞくと、足をぶらぶらしたりして先生から注意は受けるものの、じっと座っていました。先生の目を見て話を聞いています。その姿を見て、隣りで主人が「誰?あの子誰?本当にうちの子?」と何度もつぶやいていました。1回目の学習なのに、今まで見たこともない娘のこの姿に私も本当に驚きました。 帰国直前には、実際に教室に入り授業の様子を直接見学させていただいたのですが、「まさに打ちのめされた」とはこのことだというほどの衝撃を受けました。私はそれまで、「なぜ娘がそんなに長い時間座っていられるのだろう、集中していられるのだろう」と不思議で仕方ありませんでした。ただ漠然と「厳しいからかなあ」と思ったりしていました。授業を見学して、そんな思いが吹っ飛びました。そして2ヶ月間、慣れない電車に、それもラッシュアワーの時間にもかかわらず一度も嫌がらずに、それどころか喜んで娘がエルベテークに通い続けることができた理由がわかりました。 それは、先生が毅然とした態度で真摯に向き合ってくださっているのが、娘にしっかりと伝わっているのです。普段はどこを見ているのかわからないような子でしたから、活き活きとした表情で、先生を目で追っている娘を見てびっくりしました。姿勢の崩れなど娘の小さな動き一つ見逃さず、そのつど直し、妥協することなく丁寧に書かせるなど驚くほど細やかでテンポの良い学習に、娘自身が手応えを感じているのがよくわかり、私の方も夢中で見入りました。
きちんとした学ぶ姿勢で、見るべきものを見る、聞くべきものを聞く、するべきことをする、そして丁寧に正しく書くということなど、その子供に必要な学習を通して妥協することなくご指導くださいます。常に向き合って真剣に見てくださっているので、子供もそれに応えるのです。 そしてエルベテークでは家庭学習に力を入れてサポートしてくださいます。エルベテークで習った、学校の進み具合に合った宿題や今のその子に必要な基礎学力をつける宿題が出るので、その学習の仕方もご指導いただいて、毎日親と子二人のエルベの時間を作り、子供と向き合って学習します。親子共に学習の手応えを感じて、充実した時間を過ごすことで、明らかに親子関係が変わりました。
学習によって自信が生まれ、大変な時期を乗り越えられた
小学校に上がって、少人数がいいと思い特別教室に入れましたが、きちんと座って先生の言うことを聞き、丁寧に書くことができるので、すぐに学習は通常級に通うことになりました。離れ小島で完全なビジター状態でしたが、エルベテークの学習で、かけ算は学校で習う時にはもう全部覚えていたので、かけ算をスラスラ答える娘に、クラス中のお友達が「すごい、すごい!」と驚いて認めてくれ、それ以降はお友達に囲まれるようになりました。集中して淡々と答えることができるので、学年一斉単語テストでも上位に入り、先生やお友達に、「あの子はあれができるし、これもできる」と一目置かれ、認められることは本人の大きな自信にもなりました。 問題行動やトラブルが発生した際には、そのつどエルベテークに相談して、どう学校の先生にお願いして対処するかをご教示いただいたお陰で、学校のほとんどの先生方と同じ方向を向いたいい関係をつくってくることができました。しかし、必要なサポートが受けられなかったり、娘がどう頑張ってもできない不得意な項目もあります。そんな時、最初はかなりうろたえ、目の前が真っ暗になったり、娘自身も不安定になったりしましたが、「何も得ずに無駄な時間を過ごすわけにはいかない、その分、今は娘に必要な基礎学力を固める時」と割り切って、エルベテークの家庭学習に一層力を入れることで力強く立ち直り、大変な時期を乗り越えることができたのは、本当に大きな救いでした。 また、日本へ急に帰国が決まってあたふたしていたお友達にエルベテークを紹介しました。日本中から生徒さんが通っていて大きな成果をあげていること、学校との信頼関係づくりに詳しいこと、娘のこれまでの様子などを具体的にお話しました。すると、日本に帰られてすぐにエルベテークに通われるようになり、どうしていいかわからなかったところをエルベテークの先生方に支えていただいて、心強く日本での学校生活をスタートできたと感謝されたと同時に、もっと早くからエルベテークに出会えていれば、と嘆かれていました。
主人も「LAで通えるようになったんだから…」と大張り切り
今日も娘は学校から帰ると自分から「まずはエルベの宿題!」と集中して黙々と取り組んでいます。エルベテークに出会う前は、このような頼もしい娘の姿は想像もできませんでした。問題行動に対しても、いけないこと、としっかり教わっているので、家庭でも目が合うだけでこちらが何を言わんとしているか、気持ちが通じるまでになりました。また、学習で自信を持てたことで、学校のクラブ活動など、苦手だった新しいことへのチャレンジを意欲的にするようになりました。 エルベテークとの出会いで、それまで波間で彷徨っていた小舟が、正しい舵取りで力強く自信を持って進み出し、逆風が吹いたときでもブレることなく、お友達に囲まれて楽しく小学校生活を終えることができました。 数年前から夏に通うほかに、スカイプを使って学習していただき、エルベテークの学習をアメリカでも続けることができました。この度、長年娘を支えてくださった岸和田先生がロサンゼルス校エルベエデュケーションの責任者として着任され、毎週教室に通えるようになりとてもうれしく、ミドルスクールに向けて、心強い限りです。今までの娘の変化でエルベテークを全面的に信頼している主人も、日本でエルベテークに通われている生徒さんのお父さん方の多くがそうであるように、率先して「ここLAで通えることになったんだから、僕がエルベに連れて行く日を時々つくって欲しい」と大張り切りです。 主人も私も、これからの娘のさらなる成長を楽しみにしています。
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