エルベテーク
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指導事例

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Mさん 新高校1年生(小1の9月入会 発達遅滞)

9年間で得た「努力は裏切らない」という教訓

“なんとなく”から“現実”のものへ

 高校受験も終わり、4月の入学式に向けて制服採寸に行き、見本のジャケットに腕を通す娘の姿を見ながら、よくここまで成長したなぁと胸がいっぱいになってしまいました。
 娘は乳幼児の時から夜泣きが酷く、日中も機嫌悪く絶えずぐずつき、1歳5カ月を過ぎても歩かず、言葉もなかなか出ない、おむつが取れない。また自分の思った通りにならないと何時間でも泣きわめくなど育児書の成長目安に当てはまることのないまま、私はただ漠然とした不安を抱え、心配の尽きない日々を過ごしていました。 こんなふうに成長の遅れを感じつつも、地元の幼稚園に入園。そして小学校へと上がりました。ここでとうとうその不安が“なんとなく”から“現実”のものとして現れました。勉強が全くできないのです。指を使ってでしか数を数えられない。時計がよめない。文が読めない。文が書けない。先生が教えようとしても泣いて拒否する。授業中は眠くて朝からぼーっとしている等々。「何か手を打たないといけません」と担任の先生から指摘され、慌てて参考になる本を探しました。その時に偶然、「発達の遅れが気になる子どもの教え方」に出会ったのです。 それまではのんびり構えていた夫ですが、エルベテークに早急に面談を入れるよう促され、私たち夫婦と娘、3歳年下の弟、娘には何一つ問題がないと信じて疑わない私の母までもが一緒にエルベテークの相談会に行きました。娘の体験学習が終わり、様子を見てくださった先生の口から「発達の遅れは認められます。特に助詞の使い方が間違っているので言葉の伝達が苦手です。また数の概念も備わっていないので学校での勉強はとても苦痛でしょう。ただとても素直なお子さんなので、きちんと教われば少しずつ成長し、出来ることも増えてくるはずです」と率直かつ明確に娘の直面している問題点を指摘されました。 その時「やっぱり……」という落胆した気持ちもありましたが、これからスタートして頑張っていけばいいんだ、という前向きな気持ちの方が強く、その場で入会を決め、小学1年生の9月からエルベテークでの学習が始まりました。相談会に同行した私の母もその日から「何か祖父母として出来ることはないか」と、教室の送迎や留守番する弟の世話などたくさんの場面で私たちのサポートをしてくれるようになりました。 親を励ましてくれた学習とレポート
 エルベテークでの授業は小6までは毎週水曜日に学校を4時限で早退し東京から川口まで電車で通っていました。最初の数回だけ行くのを嫌がりましたが、その後は一切文句を言うこともなく、「休む?」と聞くと「絶対休まない」と即答するほどになりました。しかし、私は相変わらず勉強がうまく進まず、集中出来なかったり、分からなくて泣いたりする娘に腹を立て、時には声を荒げてしまうことも少なくありませんでした。当時の学習レポートの「家庭からの欄」を読むと「こんなに出来ない」「いうことを聞かない」「宿題に何時間もかかり進まない」など泣き言のようなことばかりグチグチと書いていました。でもエルベテークの先生は私とは娘を見る視点が違っているようで、「今日は九九をきちんと言えました」「足し算の繰り上がりのミスが少なくなりました」「漢字をきちんと覚えていました」など学習の進捗状況を丁寧に伝えてくれました。親は子供に近いぶんどうしても冷静さを欠いてしまいがちですが、そうした時こそエルベテークでの学習と先生からのレポートが私を励まし、日々の課題に気づかせてくれました。 小学校での生活は概ね良好でした。夫が学校でPTA役員を務めていたため、私以上に頻繁に学校に行き先生方と話す機会も多く、担任だけでなく補助の先生や他学年の先生までもが娘を気にかけ、見守ってくれるようになりました。私も新学年の初日には必ず挨拶も兼ねて「娘の生活面や学習面でのお願い」を手紙に書いて持参し、学年最後の日には感謝の気持ちを書いて渡しに行きました。 話は少し逸れますが、娘が小学3年生の3月、エルベテークでの授業中に起きた東日本大震災の日のことは、今でも鮮明に覚えています。電車が動かなくなってしまったため、私と娘は他の数組の親子と一緒にエルベテークで一夜を明かしました。その時に食事や毛布の提供をはじめ情報収集など先生方には大変お世話になりました。本当にありがとうございました。 前向きに取り組む姿勢
 さて話を戻しますが、娘は小学校からの友達も多数進学する学区内の公立中学に入学を決めていましたが、それでも多くの不安を抱え緊張していました。しかし、エルベテークで学習に加え、中学生になってからの心構えや注意点をきちんと教えてもらっていたので、大きな問題もなくスタートすることが出来ました。もちろん私は小学校時代と同様に担任へのお手紙は欠かさず、PTAの委員活動にも率先して参加し、先生とのコミュニケーションを大切にするよう心掛けました。 中学生になって一番驚いたのは、学習がそれまでとは比較にならないほど難しくなるということでした。娘の中学校は学区の中でも最も内申が厳しく、定期テストの内容もかなり難しいことで有名だったので、ある程度は覚悟していました。が、初めての中間テストで全教科ほぼ一桁という結果になってしまい、想像を超えたショックで呆然としました。私は返却されたテストを前に、今までの学習の進め方を全否定されたような気になり落ち込んでいましたが、娘はすぐに気持ちを切り替え、エルベテークで次の期末テストに向けて学習を始めていました。 中学校生活は次々にやってくる定期テストをこなしていくうちに、あっという間に1年が過ぎていきます。しかも期末テストになると主要教科以外に、体育・技術家庭・美術・音楽という副教科のテストも加わりさらにハードになります。娘は副教科の暗記までとても手が回らない上に、手先も不器用で実技作品も満足に仕上げることが出来ず、本当に苦労しました。しかし、前向きに取り組む姿勢、居残りをしても必ず作品を仕上げるということで足りない部分を何とかカバーしていきました。
 中学時代も友人関係での問題は特にありませんでしたが、一度だけ男子に心無い言葉を投げつけられたことがあります。その時もすぐエルベテークに連絡し、対処方法を教えてもらった後で学校に電話し、担任に事情を説明しました。この時も相手を責めるような言い方をせず、こちら側にも落ち度があったのではないか?というふうに低姿勢で担任に解決をお願いしました。するとすぐに担任が相手に連絡をつけてくれて、大ごとにならず済みました。 「大変なストレス」?「奇跡」?
 中学生になっても、娘は規則正しい生活はもちろんのこと、日々の家庭学習もおろそかにせず、とても真面目に努力を重ねてきました。けれどもあまり勉強をしない子供達でもテストでそれなりの点を取るのに、コツコツ頑張る娘はなかなか点が取れないのです。私はあまりに悔しくなり、こんなにも不公平で報われないことに何か理由というか言い訳が欲しくなってしまい、かかりつけ医の紹介で小児カウンセリングを受けることになりました。娘は言われるがまま知能テストと面談を受け、私も当時心配していた娘の抜毛の癖のことなどを話しました。 すると1カ月後に「記憶部分において同じ年代の平均値よりかなり劣っている。普通学級に在籍することは大変なストレスになっている。無理をさせず出来ることを伸ばしていく方が良い。今まで普通学級で問題なく過ごせたことは奇跡」と結果を告げられ、支援学級への転籍を勧められました。私はエルベテークで散々「どんな子どもでも学習を通して成長することが出来る」と言われ、実際ここまで自分の娘もやってきた経験と自負があるので、自ら相談に行ったにも関わらず「小学校から今までずっと仲の良い友達に恵まれ、毎日学校生活を楽しんでいます。学習面での遅れは多少ストレスになるかもしれませんが、今娘がいる環境を奪い、違う環境に放り込むことこそ余程ストレスになると思います。また現在の中学生でストレスのない子供などいないのではないでしょうか? 娘以上に友人関係や家庭内、学校や勉強でストレスを感じている子供はたくさんいると思います」と言い返してしまいました。 私は同じことをその後エルベテークでも相談してみたことがあります。その時はたった一言、「努力が足りないだけです」と言われました。娘に遅れがある、ない、ということはまったく問題ではないというのです。「学校で勉強が出来ると言われる子供たちはやっています。自分はものすごく勉強しているのに、と思っていても、それ以上に彼らはもっとやっているんです。だからただ努力が足りないだけなんです」と言われ、私は本当に衝撃を受けました。親である私が実は娘のことを一番遅れのある子として見てきた。そのことに気づかされたのです。その時から「どうせやっても無理だろう」と思うことをやめ「100回やって出来なくても、101回やれば出来るかもしれない」というふうに考え方が変わっていきました。 ゆっくりとした成長かもしれないけれど
娘はエルベテークのほかに3歳から日舞を習っていますが、中学1年の春に能楽堂で発表する機会を与えてもらい、未熟ながらも大勢の観客の前で踊ることが出来ました。エルベテークの先生も見に来て下さり、娘はとても嬉しそうでした。何事にも途中でやめたり諦めたりせず、続けることの大切さを学んだような気がします。 中学3年からはエルベテークの授業を週2日に増やしたため、ホームワークの量も倍になり、最初のころは泣き言を言っていました。しかし、夏休みから娘自身も受験を意識し始め、大量のホームワークもきちんとやり遂げるように変化していきました。志望校も定まっていたので早いうちから学校側にも単願推薦希望を伝え、内申基準を意識して生活面も気をつけて過ごしました。弟の受験と重なっていたため、3学期以降は娘の勉強を十分に見てあげられませんでしたが、本人は一生懸命「合格」を目指して頑張っていました。 合格証を実際手にするまでは実感がわきませんでしたが、今中学卒業を目前に控えた娘の姿を見ていると、幼い日のあの先の見えない不安だった日々がまるで嘘のようです。気の合う友達が出来、方程式や関数を解き、自分で身の回りのことをこなし、欠席することなく学校に通う。普通だったら当たり前で気にも留めないことでしょうが、私たち夫婦にとってはかけがえのない幸せに感じられるのです。 娘はこれからも自身の課題に一つひとつ向き合いながら、周りよりはゆっくりかもしれませんが成長していくことでしょう。不安がまったくないとは言えませんが、「努力は裏切らない」。エルベテークでの9年間で得たこの経験を支えに、娘の人生のサポーターとして、夫婦、家族で手を取り合ってこれからも進んで行きたいと思っています。


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