Yさん 小学6年生 (3歳2ヵ月入会 自閉症)
いろいろな課題を一つずつ乗り越えて確実に成長している息子
エルベテークの指導に対する共感と自らの実践
現在小学6年生になる息子は、「自閉症」と診断された3歳の時からエルベテークに通い、学習を続けています。言葉の遅れ、多動、大泣き、こだわり、偏食などの問題行動がありましたが、学習を積み重ねるにつれこのような不適切な言動を改めることができました。
これまでの歩みを振り返ると、エルベテークの指導について共感したものがたくさんありますが、最初に共感したのは次の2つです。(1)「話す」のを待つのではなく、「言わせる」という姿勢で指導してくださいます。最初話せなくても一緒に言う、言わせることが大事なのだと思いました。(2)「泣くから教えるのをやめる」ではなく、「大きくなってから分からない、できない方がずっとかわいそうだから、根気強く教える」。まさにその通りだなあと共感しました。 必ずやり遂げるまで譲らない姿勢、先生の毅然とした言い方と態度。そして一番大事な「目を見て話す」をまず初めに学びました。 そして、具体的なアドバイスに沿って、私も家庭で実践しました。そのうちの3つを紹介します。(1)よくなかったことは、やり直させる、できるようになるまで何度でもやり直す、エルベテークならではのこの方法を家庭でも実践しました。いい加減な文字は必ず書き直す、声を出して欲しくない場所でしゃべったら、もう一度スタートの位置に戻ってやり直すという感じです。(2)泣きそうになる前に「泣きません」と言って止める、不適切なこだわりもやりそうだなと思ったら、やる前に「やらない」と制止する、やってしまってから止めるのは難しく、悪い癖になってしまうので、そうならないように気をつけました。(3)簡単そうで難しいですが、「目を見て話す」「目を見る」を実践しました。そして、私なりに気づいた事は、こちらが真剣に思いを伝えたいときは、自然に相手の目を見て話しているということです。目を見ないで話すときは、あまり、本気で伝えようとしないときではないでしょうか。そんなことを私自身も発見しました。
我が家の人生が一変(「発達の遅れ」がわかってから)
息子の発達の遅れが気になったのは2歳の時でした。1歳半検診での質問項目に「はい」のチェックが少なく、「あれ?」と思いましたが、「長男に比べ次男はゆっくりなのかな?」と都合のよいように解釈しました。 そして、2歳過ぎに数個の言葉を発していましたが、その後、言葉が消えてしまいました。そこで、言葉の教室へ通いましたが、息子は泣くばかりでしたので、すぐにやめてしまいました。 この頃の息子にはいろいろな問題行動がありました。たとえば、朝、兄の幼稚園のバス停まで一緒に歩いて行けない、道路の横に置いてある側溝に降りて歩く、バス停でバスを待つ間、アパートの階段をのぼって、奥まで行きたがる、制止すると泣くといった状態でした。兄の幼稚園の行事の時は、園の中に行くと泣いて嫌がるので、外を散歩して時間を過ごしました。その他、水たまりにすわるなどし、服がぬれると異常に嫌がり、着替えるまで泣き叫んでいました。このように、一歩外へ出ると私たち夫婦は体力の限界と苦労の連続でした。 幼稚園へ入れようと考え、面接を受けた時も大変でした。うろうろしたり、園長先生の机に上がろうとしたり、先生の呼び掛けに対しても目を合わせることも応じることもできず、不合格になりました。その時初めて事の重大さに気づき、何か胸騒ぎがしました。すぐに児童相談所に予約の電話をしましたが、2カ月待たなければならず、その間居ても立っても居られませんでした。 すぐに、パソコンで「言葉の遅れ」はいったい何なのか、知りたくて調べ始めました。すると『自閉症』の項目に言葉の遅れ、ものまねあそびができないなど、息子に当てはまる項目が多くあるのを見つけた瞬間、「あっ!これだ!」と直感しました。まさか、障害だとは思ってもいなかったので、驚きのあまり血の気が引き、机にふさぎこんでしまいました。この日を境に我が家の人生は一変しました。
「息子が確実に変わっていくのがわかりました」
そんなときです。書店で『発達の遅れがきになる子どもの教え方』の本を見つけ、息子のように発達上の大きな問題を抱えた子供たちがエルベテークでどんどん変化していく事例を知り、一筋の希望の光がみえた気がしました。他の障害の本とは全く違って、方法や事例が載っているのです。 そして、児童相談所の相談日が来て出向くと、予想通り「自閉症障害」と診断されました。と同時に「子どもの遅れている現状を受け入れ、今を大切にすべき」という説明を受けました。息子の問題を何とかしたいという私たちの思いとは全く正反対の話で、言葉を話せるように指導していくのではなく、「話せない今のままを受け入れなさい」というアドバイスでした。 「これからどうしていけばよいのか」と、頭の中は心配と不安でいっぱいになり、「もうエルベテークしかない」と思い、当時は愛知県に住んでいたのですが、その日のうちにエルベテークに電話し、相談会を申し込みました。 相談会当日は、先生の毅然とされた指導を目の当たりにして息子の成長していく可能性を感じることができ、すぐに入会を決めました。 入会当初の息子は大泣きし、車から抱っこして教室まで連れていくような状態でしたが、数回通ったころから、私の「座って!」の指示が通るようになったのです。また、私たちが言っていることを、目を見て聞き、理解しようとする姿が見られるようになり、息子が確実に変わっていくのがわかりました。 エルベテークは、話すのを待つのではなく、言わせる、という姿勢で指導をしてくださいます。泣いてばかりで、最初入室の挨拶の「こんにちは」、退室の「ありがとうございました」が言えませんでしたが、泣いていようと関係なく一緒に促しながら挨拶を続けていくうちに、「ありがとうございました」が最初「・・・た」「・・・ました」「ありがとうございました」と変化していきました。 多動だったので、80分座って学習することが困難だったと思っていましたが、エルベテークは、「座ります」と言って椅子に座らせる。「口を閉じる」と言って唇を上下そっと閉じさせるなどして教えていくことを知って、なるほどなあと、実感すると同時に、息子は言葉と動作が一致していなかったから、分からなかった、できなかったのだと思いました。 そこで、息子がもっと伸びるために、エルベテークの学習回数を増やせないものかと思い、主人も同じように考えていたようでした。そして、東京への転勤が決まり、年少の4月からエルベテークを週2回、母子通園施設を週1回(秋からは週3回)、通うことになり、学習がさらに進んでいきました。 その頃、診断名が「広汎性発達障害の非定型自閉症」に変わりましたが、自分の欲求を少しずつ言葉で伝えたり、私の「○○したいの?」という問いかけに「うん」と返事をするようになりました。秋には「お母さん」と呼び、2語文も話せるようになりました。ひどかった偏食(食べられたものは、うどんなど麺類とごはん、お菓子、ホットケーキ、しめじだけ)も改まりました。
我慢し、折り合いをつけ、乗り越えていく力
生活面での変化も現れてきました。エルベテークに通い始めると同時に、通園施設の療育が始まりました。園の駐車場が少し離れたところにあったのですが、すぐに走って行ってしまうので、「手をつないで歩く!」練習を主人と休日に始めました。手を離しそうになると「離してはだめだよ!」と言い続けました。 また、私が靴下をはかせていたので、「一人ではきなさい」と言うと、大泣きでした。次の日は「はくまで30分くらいかかるかな」と覚悟を決めると、泣くことなくあっさりと一人で靴下をはいたのでした。このように一つひとつ目標が達成すると、もちろん大泣きされると教える気持ちが萎えてしまいそうになるのですが、「これで教えられる!」と見通しがつき始めました。 でも、どうしても独り言と歯医者での大泣きの壁が越えられません。でも、独り言が車中でうるさくなってきたら、諦めずに「しずかに!」と言い、歯医者の玄関口で、「今日は、泣かないようにがんばろうね」と手を握り、願いを込めて伝えてから病院へ入ることを続けていきました。すると、年長になった頃には、全く泣かずに、しかも、自分から椅子に座るようになり、看護婦さんも驚いていました。 これらは、エルベテークの学習で息子が我慢し、折り合いをつけ、乗り越えていく力を身に着けてくださったからです。大人の都合に応じられる力をつけさせる大切さ、これに尽きると思います。
家庭学習と学校生活
幼稚園のころは、私がゆっくりみてあげられる夕食後に、エルベテークの宿題と家庭学習教材をやるようにさせました。エルベテークの宿題はやったことがある内容なので、楽しく取り組めました。 今もこの時間帯にやっています。5,6年生になると、宿題の量が多い休日には朝と夕食後と2回に分けてやります。わからないだろうな、と思うところに関してはすぐに答えを教えてあげ、あまり分からない時間が長くならないように心がけました。分からないと嫌になってしまうので、これは避けるようにしてきました。テンポよく解かせました。 小学校に入学して初日から意識したことは、学校から帰ってきたら、今後、一人で出来て欲しいことを、私がまず行いました。本人が当初できたことは帽子を置く場所、ランドセルを置く場所がわかるくらいで、ランドセルの中を出して、次の日の教科書をそろえるのは難しかったので、低学年の頃は私がやりましたが、それを見ていたのでしょうか、いつの間にか自分でそろえるようになっていました。 宿題は今もリビングでやります。時々自分の部屋でやりたがることがありましたが、一人で解いても絶対に間違えないもの、音読、漢字練習、簡単な内容の計算ドリルだけにさせました。間違って解いてしまう前に指摘できるようにこちらが一問一問丁寧にみたいからです。そのうち、漢字練習は、一人でも進められ、音読も分からない漢字があると私に聞いてきますが、ひとりで済ませ音読カードに自分で○とハンコを押しています。 4・5年生くらいからよほど分からない問題や、支離滅裂の文章を書いてしまいがちな道徳の感想や作文、苦手な新聞作りは、「お母さん、わからないの」と助けを求めてきます。ひとりで行える学習でも、これは間違うだろうな、と思うものは一人でやらせずに、必ず一緒にやります。5年生から自主学習が始まったので、教材の問題をはったり、忘れそうな問題を書いては、繰り返し学習させています。現在、文字を使った式、円の面積、分数のかけ算・割り算、漢字など自主学習しています。 小学校の担任との信頼関係の取り方については、息子の学習面・生活面で配慮いただきたいことをレポートにまとめてお伝えしました。 最後に一言。自分のお子さんが、きっとできる、必ずできる、と信じてあげれば、その思いや願いは必ず伝わると思っています。どんな小さなことからでもいいと思います。一緒に頑張ってみてください。いつか、きっと、いいことが起こると信じて……。そして、いつも頑張っているお母さんお父さん、頑張った本人には、いつか大きなプレゼントとして戻ってくることでしょう。